体癖(たいへき)とは野口晴哉(はるちか)さんという整体師が考え出したものです。ざっくり言うと、人はみな体の使い方、動かし方にくせがあり、そのくせによって心の使い方、感じ方に特徴がある、といった考え方です。その特徴を体系化したものが体癖です。
動作と腰椎の関係
体を大きく動かすためには腰椎が関係してきます。そして腰椎は全部で5つあるため、動作も次の5つに分類されます。
腰椎 | 関係する動作 | 動作の例 |
1番 | 体を上下に伸縮する | 背伸び、腕を上に伸ばす |
2番 | 体を左右に傾ける | 片足に重心をかけて立つ、首を左右に傾ける |
3番 | 体を左右にねじる | 足を組む、上半身をひねって立つ |
4番 | 骨盤を開閉する | しゃがむ |
5番 | 体を前後に倒す | お辞儀する |
ちなみに、へその真後ろの腰椎が腰椎3番で、腰椎3番の上が腰椎2番、その上が腰椎1番となり、腰椎3番の下が腰椎4番、そしてその下が腰椎5番となります。
5つのくせ
人はみな、先にあげた5つの動作を無意識にしてしまうくせがあります。僕は散歩したりするとき、かかとをあまり地面につけないで上に伸び上がるように歩くくせがあるようです。自分では意識したことはないんですが人から指摘されて気がつきました。また、椅子に座るとつい足を組んでしまうくせもあります。ですので、僕には腰椎1番の伸ばす動作と腰椎3番の捻る動作のくせがあります。そして野口先生は、この5つのくせごとに、「中心となる感受性」と「特徴がもっとも現れる体の部位」を発見しました。
中心となる感受性
上述したくせのある腰椎の動きごとに感受性(価値観、判断基準)の違いがあります。また、腰椎ごとに分類名をつけました。
腰椎 | 分類名 | 感受性(価値観、判断基準) |
1番 | 上下型 | 評価。 人からよく思われたい、褒められたい、貶されたくない、怒られたくないという毀誉褒貶で判断する。 世間の一般的なルールを守りがち。 |
2番 | 左右型 | 感情。 好き嫌い。他人の目は気にせず、自分が好きか嫌いかで判断する。 |
5番 | 前後型 | 損得。 得をする方を選び、損をすることには目もくれない。 損すると思ったらあっさりと離れていくので、状況によってはとても冷たく感じることがある。 |
3番 | 捻れ型 | 勝敗。 常に相手がいて、その相手に勝ちたい、または負けたくないという基準で判断する。 |
4番 | 開閉型 | 愛憎。愛情で判断する。 |
腰椎5番が真ん中に移動していることに注意してください。野口整体では、この順番で体癖を説明しています。理由はわかりません。野口先生が発見した体癖の順番なのかもしれません。以後、この順番で説明していきます。
特徴がもっとも現れる体の部位
5つのくせごとに、特徴がもっとも現れる体の部位があります。
腰椎 | 分類名 | 特徴がもっとも現れる体の部位 | 特徴 |
1番 | 上下型 | 頭脳 | 思考に特徴があり、考えるまたは考えさせられる。 考えるだけで満足し、行動しない傾向がある。 |
2番 | 左右型 | 消化器 | 食べることが好きで、体調が悪くなるとさらに食べることで元気になろうとするか、または食欲がなくなる。 |
5番 | 前後型 | 呼吸器 | 肺が強いか弱い。強い場合は常に動き回っているが、弱い場合はすぐに息切れしてしまう。 |
3番 | 捻れ型 | 泌尿器 | 泌尿器に特徴がある。体調が悪くなると泌尿器系に異常が出やすい。 |
4番 | 開閉型 | 生殖器 | 生殖器に特徴がある。体調が悪くなると生殖器系に異常が出やすい。 |
鬱散要求と集注要求
上述した5つのくせ以外に、野口整体ではもう1つ重要な要素があります。それは「鬱散要求」と「集注要求」です。
人はエネルギーを消費したり生産(または他人から集めたり)しながら生きています。そして、エネルギーがたまりすぎるとそれを鬱散しなければ爆発してしまいます。逆にエネルギーがなくなると動けなくなります。このため、エネルギーは多すぎず少なすぎず、常に一定の量に保とうとする働きが人には備わっています。エネルギーがたまりやすく自発的に発散できる人を「鬱散要求」、エネルギーがなくなりやすく人の気を引いてエネルギー(注意)を集める人を「集注要求」として野口先生は分類しました。
鬱散要求
エネルギーがたまりやすいため、エネルギーが一定量を超えると、考えることで鬱散する人、感情を爆発させることで鬱散する人、体を動かすことで鬱散する人などなど、自発的にエネルギーを鬱散できる人を鬱散要求とします。鬱散要求の人はざっくり言うと「積極的」、「能動的」と言えます。
集注要求
鬱散要求の人とは違って集注要求の人はエネルギーがたまることが少なく、エネルギーが足りなくなると、他人の関心を得ることでエネルギーを補おうとします。たとえば、怪我をしたときにそれを見せびらかして関心を得たり、変な格好をしたり、そうすることで人の関心を自分に向けることでエネルギーを集める傾向にあります。他人から注目されると言うことは、他人が集注したエネルギーを自分に集めることになるからと野口先生は説いています。難しいので僕もまだ完全には理解していませんけれども。こちらはざっくり言うと「消極的」、「受動的」と言えます。
体癖一覧
野口先生は、これら5つのくせ、感受性、特徴がもっとも現れる体の部位、そして鬱散要求と集注要求をまとめ、以下のように1種から10種に分けました。実は、11種と12種もあるのですが、これは非常に難しいのでここでは説明しません^^;
腰椎 | 分類 | 感受性 | 部位 | 鬱散要求 (積極的、能動的) | 集注要求 (消極的、受動的) |
1番 | 上下型 | 評価 (毀誉褒貶) | 頭脳 | 1種 | 2種 |
2番 | 左右型 | 感情 (好き嫌い) | 消化器 | 3種 | 4種 |
5番 | 前後型 | 損得 | 呼吸器 | 5種 | 6種 |
3番 | 捻れ型 | 勝敗 | 泌尿器 | 7種 | 8種 |
4番 | 開閉型 | 愛憎 | 生殖器 | 9種(閉型) | 10種(開型) |
体癖の呼び方
たとえば、腰椎1番のくせを持っていて集注要求の人は「上下型2種」あるいは単に「2種」と呼びます。腰椎5番のくせを持っていて鬱散要求の人は「前後型5種」、「5種」とか。なお、開閉型については、鬱散要求の場合、「開閉型9種」、「9種」以外に、「閉型9種」または「閉型」などと呼びます。開閉型だけ「閉型」と「開型」という別称があるからです。「9種」は骨盤を閉じるくせがあり、「10種」は開くくせがあるからでしょう。
体癖ごとの特徴
上下型
共通する特徴
- 細長い直線的な体型
- 首に特徴があり、長いか太い
- 睡眠時間が長い
- 青色が好き
- 地味な服装が好き
- 理屈気味
- 正義感が強く、ルールを守る
- 褒められることが好き
- 夢を見やすく忘れない
- 読書好き
- 音楽を聴くとき、メロディーに惹かれる
1種
- 昆虫顔(アゴが尖った逆三角形)
- 何もないところから新しいことを考えることが得意
- 学者タイプ
- すべての事象を言語化したい欲求がある
- (空などを)飛ぶ夢を見る
2種
- ゴリラ顔
- すでにあるものを改良することを考えることが得意
- 常に不安を抱えている
- 公務員タイプ
- 自分で見たことより噂を信じやすい
- イメージが先行するため、事象を言葉で表現しようとすると行き詰まる
- 考えて不安になると胃腸が不調になる
- (穴などに)落ちる夢を見る
- 人との会話を頭の中でシミュレーションして予行練習する
左右型
共通する特徴
- 赤色が好き
- 片付けが苦手
- 華やかな服装が好きだが、トータルバランスを考えないため、ごちゃごちゃしている
- 音楽を聴くとき、音色に惹かれる
- 色のついた夢を見る
3種
- 丸顔または瓜実顔
- どことなく丸っこく曲線的な体型(必ずしも太っているというわけではない)
- 体調がいい時も悪い時もよく食べる
- 嫌いなものより好きなものに敏感
- 集団に3種がいると場が明るくなって華やぐ
- 左に傾きがち
4種
- パンならこの店、はちみつはここなど、自分のこだわりを強く持っている
- 体調が悪くなると食欲がなくなる
- 好きなものより嫌いなものに敏感
- いつもニコニコしている
- 泣くことでストレス発散
- 右に傾きがち
前後型
共通する特徴
- 三白眼
- 損得で判断するため、自分にメリットがないとわかると手のひらを返したように冷たくなったりする
- 音楽を聴くとき、テンポ、リズムに惹かれる
- 膝を上下に動かして貧乏ゆすりをする
5種
- アスリート体型、肩幅が広い
- スポーツが得意
- サル顔
- ながら行動が得意(音楽を聴きながら勉強とか)
- あまり食べなくても元気
- 考える前に行動する
- 睡眠時間が短くても平気
6種
- 猫背
- しゃくれアゴ
- 夢を語らせるとすごいが、自身は言うだけで行動しない
- うるさい環境では集中できない
- しっかり食べて栄養をとる必要があるという固定観念をもっているため、栄養をとる目的でそこそこ食べる(3種は食べることが好きだから食べる)
- 肺が弱いため行動するとすぐに疲れてアゴが出てきてへばる
捻れ型
共通する特徴
- 格闘家体型
- 天邪鬼
- 大汗かきまたはまったく汗をかかない
- 音楽を聴くとき、音量に惹かれる
- 年をとるごとにかなり老けてくる
7種
- 勝ちたいという感情で行動する
- 集団に7種がいるとなんだか雰囲気がざわつく
- 喧嘩っ早い
- 左肩が前になるようにねじりがち
8種
- 負けたくないという感情で行動する
- 他の人がやりたがらないことをあえてやるようなボランティア精神がある
- 褒められるのが苦手
- 右肩が前になるようにねじりがち
開閉型
共通する特徴
- グレーが好き
- シックだけどおしゃれ、隙がない
- 音楽を聴くとき、間(裏拍、無音)に惹かれる
- 夢と現実を取りちがえる
- 膝を左右に動かして貧乏ゆすりをする
- 年を取っても若々しい
9種(閉型)
- 顔のパーツが鼻に寄り気味
- への字口
- 一度好きになったらすごく面倒をみるが、嫌いになるといつまでも嫌い、執念深い
- 正面から見るとお尻がキュッとしまっているが、横から見るとプリッと出ている
- 小柄な人が多い
- 脚(ひざ下)より太ももが長い
- 凝り性で完璧主義
10種(開型)
- 顔のパーツが鼻から離れ気味
- 出産前は痩せている女性が多いが、出産すると急に太る場合がある
- 尋常じゃないくらい太っている人は10種体癖濃厚
- 頼られると何でもかんでも受け入れて守る
- 自分の体調が悪いときでも人の世話をしていると体調がよくなる
- 正面から見るとお尻が広いが、横から見ると意外と平べったい
- 捨て猫を何十匹も飼って面倒みたりする
男性は多かれ少なかれ1種体癖を持っていて、女性は3種体癖を持っています。また女性は生理があるため、体癖の波が男性より強く、それが女性特有の気まぐれに見えるようですが、閉経後は本来の体癖に落ち着いてくるようです。
複合体癖
1種から10種まで、ぜんぶで10種類の体癖をざっと紹介しましたが、これら一つだけの体癖を持っている人はまれで、大抵は2〜3の体癖を持っています。1種が6割、5種が3割、8種が1割、みたいな感じです。
なお、同じ分類の鬱散要求と集中要求が同時に現れることはないと言われています。だから上下型1種と上下型2種のミックスはありえないわけです。ただしこれは僕の想像ですが、体調がいいときは1種が出るけど、体調が悪い時は2種に変わる、というのはあり得る気がします。同じ分類の鬱散要求と集中要求が同時に出ることはない、というわけです。
また、体癖というのは原色みたいなものなので、たとえば上下型が青、左右型が赤だとすると、上下型と左右型の複合体癖の場合、青と赤の特徴が出るのではなく、青と赤が混ざった紫のような特徴になります。しかも、青が多いと青紫になるし、赤が多いと赤紫になります。ですので、この世にはまったく同じ体癖を持った人はいないのです。
まとめ
ここまでの説明では、おそらく体癖のことはほとんどわからないと思います。実はこれから各体癖を掘り下げていくと体癖の面白さがわかってくるのですが、今回はここまで。この体癖がわかると人とのコミュニケーションがとても楽になるようです。「ようです」というのは、僕がまだまだ体癖を理解できていないから。
ちなみに僕のメイン体癖は上下型2種だと思います。僕は今まで自分の体癖を上下型1種だと思っていましたが、もう一度よく考えると2種のようでした。今回は詳しく説明できませんでしたが、僕はすべての体癖の中で上下型2種が一番嫌いだったんです。だから上下型2種の説明を読んだ時点で無意識のうちに「自分はこんな人間じゃない」と反発して無理やり2種の逆である1種だと思い込もうとしていたのかもしれません。ちなみに他にも魅力的な体癖はあるんですが、僕の見た目がどう考えても上下型なので、他の体癖の可能性は考えられませんでした。
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